一枚の花びら

桜の開花宣言が出たというのに、この気温は花冷えというにはあまりに寒い。

先週、一足早く彼岸桜で部屋の中に春を呼び込みました。桜を、ベースの縁に添って丸く囲うよう活け、ネストに見立てました。満開の桜越しに内側のラナンキュラス、ヒヤシンスを眺めるのも、また違ったお花見になるかも知れません。

春は名のみのこの頃。市場は春爛漫で使いたい花がありすぎて選ぶのに困りました。

横長のデザインをアレンジする場合、チューリップの花は、頭が鎌首をもたげるように動いてしまうので、使いにくいお花ですが、その動き方も楽しみながらのデザインです。

チューリップのスッとしたラインと、うんりゅう柳のくねくねしたラインの違いが面白かったと思います。

ドーナツ状の器に柳を一方向に挿して花止めの役割も兼ねました。柳は行李柳（コウリヤナギ）を選びました。ネコヤナギより細く花芽も小さくて可愛い。

”行李”なんてほとんど目にしませんね。私も、数年前実家を整理した時に、押し入れの奥の方から出てきた、古着が入った柳行李を目にしたのが最後です。深いふた付きの長方形の入れ物で、底とふたの角に深緑色の麻布で補強されており、クラシック感をより感じたものです。古いもの好きとしては泣く泣く処分しました。

これを編むのに細く、柔らかくて良かったのでしょう。今回のような小さめなアレンジメントに向いています。